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『春うららかに萌ゆる日々』織倉まこと

『春うららかに萌ゆる日々』織倉まこと(蒼竜社)
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出版社オフィシャル

あらすじ

 ヒロイン「萌」はすごい力を秘めているらしいので、力を解放するため女神見習い姉妹がさんざんレズるが特に理由もなく失敗する。(くり返し)

レビュー(ネタバレ)

 織倉まことという作家は、作家として致命的というか、なんでまだ死んでないんだってぐらい作劇能力に欠けている作家である。今まで何度となく風呂敷を広げてみては取り返しがつかなくなっていきなり話が平行世界かと思うような別枠のストーリーに飛んでまたそこでも風呂敷を広げて、をさんざん繰り返してきたような男である。冗談抜きでヤマもオチも描く能力が無い、そんな作家の最新作。もちろん今回もヤマもオチもない。
 情報を断片的に散りばめるという慣れないテクニックを使って、結局断片的すぎて読者に何の情報も伝わらない第一話も衝撃的だが、続く第二話では開き直ったのか、モノローグ1ページで全部の設定を説明しきってしまう。そしてこれ以降、ストーリーは比喩ではなく何も進行せず、毎回最初から最後まで女神見習い姉妹と萌のレズに終始するようになる。それがいい加減続いて単行本の最後のあたりに来た頃、いつものように話は途中で完結する
 一応敵対勢力として悪魔っ娘も登場するのだが、これだけ分かりやすい敵対の構図を用意しておきながらさすがは我らが織倉先生、何らストーリーに介入させないという高度な文学性を持つかそれかただの馬鹿みたいな作劇法を持ち込み、ストーリーに進行する余地を与えない。最初の登場時、いつの間にかいなくなっていたのにはさすがに驚かされた。さすがに最後の方ではイカせ勝負というあまりと言えばあまりな方法で話にからむようになるのだが、この時も結局いつの間にかいなくなっていた
 とまああんまり面白いんでさんざん言ってしまったが、何の悩みもくったくもなくたぶん愛もない野放図なレズライフを描き倒したいという作者の情熱と我が儘に貫かれた一編ではある。作劇能力と反比例して画力があるから許される事ではあるが、どういう神の悪戯でこんなアンバランスな才能が生まれたのだろうか。とにかく織倉まことのエロ絵が見たいというなら買うべし。それ以外の何かを求めているなら、こんなレビューを読んでいる場合ではない
(2004/03/01)

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