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『明日は明日の風が吹くのか?』秋川康一

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(シーズ情報出版)2003/11発売

DMM
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 表紙に騙されて買った

あらすじ(ネタバレ)

■1. 明日は明日の風が吹くのか?
 東京の地下が謎の怪物に占拠された。民間人の避難計画から取り残されてしまった主人公「拓也」とヒロイン「茜」は、恐ろしいほどうやむやの内に自衛隊と怪物の緊張感の無い戦闘に巻き込まれ、深い意味もなくピンチになったりもしたが、助けてもらった。ラストで実は拓也は自衛隊の偉いさんの弟だったという本編に全く関係がない秘密何の必然性もなく明らかになる。

■2. 大鳳学園事件綺譚
 全寮制女学園でレイプ事件が起きた。主人公「かすみ」と親友「瑞穂」は先輩の「柊」に呆れられつつも、正義感から捜査に乗り出す。何でも知ってる理科の先生に犯人の逃走経路(地下通路)と血液型をすっかり教えてもらい容疑者は男性教師「安西」一人に早くも絞られる。安西に恋心を抱いていた瑞穂がショックを受け、何となく例の地下通路に来てみると当の安西に襲われる! いかにもミスリード中ですといわんばかりの描写の後、案の定真犯人が邪魔をして去って行く。余裕たっぷりだった真犯人だがなぜか自室の鍵を落としていたので正体がバレてしまった。真犯人の正体は安西の元恋人の柊だった(第一話で怪しくありませんという顔をして登場しているので読者もきっとビックリだ)! その後柊は自分がふたなりだったので安西に拒否され、安西とつきあった女子を次々と犯してみたとか泣き笑い顔で告白し、罪は償うと感動的にほざく

■3. 大鳳学園事件綺譚(番外編2題)
(その1)かすみが酒に酔った勢いで瑞穂を襲うが(ちなみにかすみは前回泣きながらレイプはいけないと断罪していた。まあ関係ないが)、ペニスバンドを装着してこれからという所で酔いが回って吐いて終わり
(その2)かすみの後輩(初登場)が主役。例の理科の先生が作った好きな夢を見られるマシーンで2人に分裂して男性化したかすみ相手の淫夢を見てハッピーになる

■4. 金色夜叉
 4ページのギャグ短編(笑えない)。エロマンガですらないから省略

レビュー(ネタバレ)

■1. 明日は明日の風が吹くのか?
 ああ作者は廃墟と化した東京での怪物相手の殲滅戦を描きたかったんだなあ。いいから真面目にエロを描け。としみじみ思う一作。
 ヒロインが怪物の巣にせっかく捕らわれたのに、いよいよという場面でやっぱり主人公が助けに来たあげく「ま、結局は犯られなかったし」等と脳内補完の可能性まで打ち消すセリフを言わせるという、まったく分かっていない構成。一応怪物の巣内では誰とも知れない捨てキャラが大量に犯られてはいるが、総計で6ページといった所であるし何の作者の思い入れもなくコマが消化されていくのでこれを目当てに買うほどの価値はあるまい。ただし、これら捨てキャラの一部とヒロインの顔がかなり互換性が高いので、これをヒロインが犯られている場面に脳内変換できるなら買う価値はある。なまじ元が寸止めな分、爽快な気分だ
 作者は長谷川光司名義で馬鹿アニメ『天使のしっぽ』のコミカライズ版も描いているらしい(よく知らないが)だけあってキャラ絵はそこそこ上手いのだが、アクション描写やスペクタクル描写に関しては高校の漫研レベルで、作者が一番描きたかったであろう殲滅戦に何の説得力もない。ストーリーの構成力も同様で、民間人の主役カップルを保護した自衛隊員が、「折角だ」という理由でわざわざ最前線に参加させるのには驚かされた。劇中の描写を見るかぎり、たぶん女の方は武器すら持たされていない
 この程度の力量で最後の方では「怪物達も生きるために必死だが、人類も滅ぼされる訳にはいかない。自然とはかくも厳しいのか」という手垢の付いたテーマ立派そうに語るのだから、このネームを通した編集者の罪は重いと言わざるを得ないだろう。

■2. 大鳳学園事件綺譚
 ミステリ仕立てに一応なっているのだが、世間ではこういう物をミステリとは言わない
 本当に何の伏線もなく真実が勝手に明らかになっていくので読者は心底置いてきぼりを食らう。唯一伏線と言えそうなのは序盤に真犯人が「ぜんぜん怪しくありません」という顔をして登場するシーンだけだが、本当にただ登場するだけなのでこれを伏線と言っていいものか微妙だ。そう言えば結局主人公は「犯人が部屋の鍵を落とした=部屋の主が犯人」という穴だらけの推論以外には何ひとつ思考らしい思考をしていなかった
 そんなくだらない事はさておくとしても、レイプ事件が舞台なのにヒロインの一人はフェラチオのみもう一人は何もなし和姦すらなし)で済ませるというのは作者の正気を疑う
 一応見せ場として被害者の一人のレイプシーンはあるが、セックス経験が自慢のバカ女という特にストーリー上必要ない設定のおまけ付き。この設定さえ無視すれば(どうせ説明ゼリフでしか出てこない薄っぺらな設定なので簡単ではある)、それなりに使えるシーンとは言えるかもしれない。前戯が無い上に恐ろしく早漏でさえなければな。

■3. 大鳳学園事件綺譚(番外編2題)
 そろそろ書いてて嫌になってきた。ヒロインに挿入しないと作者が得をするような我々には想像もつかないシステムが存在するとしか考えられないが、まあ作者は死ねばいいんじゃない?
 一方かすみの後輩話はこの単行本で唯一のエロシーンで話が展開するまっとうなエロ漫画。それでも和姦で正味3ページではあるが、もういいやこの作者馬鹿だし
(2004/03/07)

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