ヱロチカ: コミック レビュー
ヱロチカ > コミック レビュー > 『陰陽夜話SEIMEI』黒岩よしひろ

『陰陽夜話SEIMEI』黒岩よしひろ

『陰陽夜話SEIMEI(セイメイ)』黒岩よしひろ(双葉社)2004/4発売
イーエスブックス
Amazon
 黒岩よしひろと言えば週刊・月刊ジャンプの『サスケ忍伝』『変幻戦忍アスカ』『魔神竜バリオン』『不思議ハンター』と打ち切り漫画界に燦然と輝く漫画家であった。その後『鬼神童子ZENKI』のプチヒットで持ち直したかに見せかけて『流星超人ズバーン』で原作者がいないとダメだコイツと読者にバレてしまった漫画家でもある。
 こうした流転の果てに黒岩よしひろは結局エロ漫画家に行き着く。元々往時の少年読者にエロトラウマを与えるほど裸体描写には定評のあった作家なのでこの結果は必然とは言えるのだが、今さらエロで成功するぐらい漫画力があるならとっくに少年誌で成功していてもいい訳で、結局出来上がったのは『ふわふわ。』のような中途半端なぬるい作品ばかりだった。
 そんな黒岩よしひろの新作を何で買うのかって言うと、退魔士物だから妖怪に犯られたりとかちょっとだけ期待したんだよ畜生!

あらすじ(ネタバレ)

 陰陽師安倍晴明の子孫でありながらダメ探偵兼祓い師の「清明」の元に、ある日突然式神「銀狐(ぎんこ)」が現われる。かつて安倍晴明に使役されていた彼女は、人違いで清明に取り憑いてしまったらしい。
 この契約関係を無効にするため、妖怪退治に奔走する清明と銀狐。妖怪退治の技術はこれといって無い2人だが、陰陽合一という建て前でセックスすると必殺の魔剣が現われるので、妖怪出現→妖怪の前でセックス→剣が出てくるので妖怪切断という気の遠くなるようなプロセスを律儀に守ってそれなりに成果を挙げる日々。
 しかしそんな中、謎の男(最後まで謎)「道満」が2人を襲う。彼は安倍晴明の式神5匹のうち4匹を既に使役しており、最後の1匹である銀狐をコレクション感覚で狙っていたのだ。清明が式神達の5P戦法メロメロになっている間に、特にドラマ性もなく攫われる銀狐。
 攫われてから銀狐の大切さに急に気付き落ち込む清明だったが、その想いと道満が仕掛けた呪符(後付け)がうまい具合に作用して生まれた妖怪「しょうけら」が道満を急襲する。そのパワーは絶大で、道満は式神4匹も持っていながら手も足も出ない。その隙に清明は銀狐といつも通りセックスしていつも通り妖怪も倒してめでたしめでたし。
 道満達は去ったが、なぜか式神の一匹「白狐」が何の説明も無く契約を無視して清明の元に転がり込んで

レビュー(ネタバレ)

 相変わらず中途半端
 元ZENKIの作画担当だけあって描き慣れた奇麗な線とややムッチリ系の肉体描写はさすがと言えるが、肝心のエロシーンがウルトラマンエースの変身程度の意味合い(北斗と南のカップルが「ウルトラタッチ」で変身する)しか持っていないのはエロマンガ読者に対する挑戦としか思えない。
 銀狐と清明の必殺セックス以外にも妖怪に捨てキャラや銀狐が襲われるシーンもあるにはあるが、作者のこだわりか掲載誌の限界なのかいわゆる寸止めが多くこれまた中途半端。終盤、銀狐が悪役・道満に絶頂寸前まで犯られるシーンは見所となりえたのに、わざわざ銀狐の記憶を失わせて和姦風に持ち込んだため、俯瞰してみれば和姦ではないが状況としてはレイプでもないというどちらのニーズにも応えない中途半端ぶり。大体捨てキャラにまで寸止めするエロ漫画って初めて見た
 ストーリー構成能力の無さはサスケ忍伝の頃から全く進歩が無く、連載当初は先祖の方の安倍晴明を慕っていたはずの銀狐が何のきっかけも無く現代の清明に惚れ込んでいたり、主人公の清明が単なる役立たずという以外にキャラが立っていなかったりとドラマの基本が恐ろしくないがしろで、ZENKIの原作者谷菊秀先生から何も学んでいないらしい。最初から最後まで物語の核となる強制的な実行力を持つ「契約」の設定を、最後の1ページになって突然ナチュラル無かった事にするというやらなくていいどんでん返しは、かのサスケ忍伝最終話の「大ボスをついに倒したが、実は生きていて逃げられた!」展開を彷彿とさせた。どうもこの作者の話のまとめ方に対する考え方は生まれた時から間違っているようだ。
 寸止めかなし崩しな和姦の2択とは言え、あの黒岩よしひろの作画で全編やりまくっている点は確かに評価できるので、幼少時のエロトラウマに決着をつけるためなら読んでみるのも一興かもしれない(当時とは絵柄もかなり異なっているが)。特にヒロインの銀狐は天真爛漫で一途、「〜じゃ」の武家しゃべりと、主役と違って比較的まともにキャラが立っているので読者によっては案外くるものがあるだろう。このサイトとしては残念でしかないが。
(2004/04/03)

$MTBlogName$ コミック レビュー 目次に戻る 
ヱロチカ トップページに戻る