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『桃色討魔伝』川上聖

『桃色討魔伝 よりみちゅとゆかいな仲間たち』川上聖(蒼竜社)2004/04発売
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 アオリ文によれば「魑魅魍魎を討つために男装の麗人『源頼光』が立ち上がる!」 すなわち女退魔士ものという、よくある奴だ。ここから予想されるパターンは2つ。  まさに天国と地獄。だが、あえてAの可能性に賭けて購入!
 ……勝ち目の無い戦いである事は最初から分かっていたさ。

あらすじ(ネタバレ)

 「源頼光」(男装)は魑魅魍魎の殲滅を目的とする京都守護職である。供の「渡辺綱」、彼の友人である陰陽師「安倍晴明」、幼なじみ「碓井貞光」らと妖怪退治に奔走し(なお、この連中が全ての敵を退治するので、本作中彼女が活躍した場面は1コマも無い)、また時に風呂を覗かれたりと前世紀のお約束飽きるぐらい全10話中5回)繰り広げる日々。
 そんな最中、鬼神「いばらぎ童子」が寿命の来た今の体に代わる新しい肉体を求めて京の町を襲う。彼の狙いはかつて人の女と交わった時生まれた娘「金時」だったが、晴明らの派手なだけで何が起きているのか分からない雷魔法攻撃だのなぜか反撃されない剣術だのに阻まれことごとく失敗。そこらの女を触手攻めにしたり適当に犯したりして食いつないでいるものの限界が近いいばらぎ童子は、のこのこその辺を歩いていた頼光に1コマで乗り移る(これ以降、主人公である頼光自身の意思の出番は無い)。
 まあ色々あったが結局、頼光を慕う貞光はその心の隙を突かれ敗北。そして頼光を思う気持ちでは彼をも凌ぐ綱は、頼光の面影に向かい愛を語る。「気がつけば俺は『どうすればこの方を幸せにできるのだろう』とそればかり考えるようになっていました。ですから……一緒に死んでくださいってお前馬鹿だろうやむやな戦闘シーンのうちにうまいこと心中した綱だったが、なんか愛の力で2人とも蘇ったみたいよ?

レビュー

 頼光が触手に捕まったのに犯られねえ
 この他いかにも勘違いした女性作家らしいエロのピンボケぶりは全編に渡っていて、巨乳美人「卜部季武」もロリ少女「金時」もせいぜい風呂に入るだけでエロシーンは皆無。だいたい金時はロリと言えば聞こえはいいが不細工だ。基本的に本作のエロシーンは誰とも知れないモブ女が担当している。
 頼光がいばらぎ童子に乗り移られる時点でレイプされたことを匂わす描写もあるが、匂わすだけで1コマも出ない。その代わりに意識を乗っ取られた頼光が貞光を逆レイプするという、まったく嬉しくない展開には5ページかけるという間違った情熱ぶり。途中に読者サービスのつもりなのか頼光がラブラブセックスの夢を見るシーンもあるが、男の体に絡み付いてばかりで肝心の頼光が見えないので何の意味も無い。
 どうやら作者は特に魅力の無いヒロインがいい男達と和気あいあいとしたり命懸けで愛してもらったりする話が描きたかったらしいが、そういう話はどこか別の男性読者のいない世界で描けと言いたい。ちなみに本作は連載時の『よりみちゅとゆかいな仲間達』というどの世界でも最悪レベルのタイトルが、編集者によって『桃色討魔伝』というそれなりにエロを感じるタイトルに改題されているのだが、この勘違い女まだわかっていないらしく巻末おまけ漫画で「恥ずかしい、そしてダサい」と笑いものにしている。二度とこいつの単行本を買うものか
 ただしこの作者はキャラの描き分けがほとんどできていないので、頼光が触手に犯られかけるシーンの後に捨てキャラが触手に犯られるシーンを読めば、何の違和感も無く頼光が犯られているシーンに見えるのが救いと言えば救いだろうか。スクリーントーンを多用したむっちり巨乳ボディの描写は最近流行らないとは言えなかなか見るべきものがあり、表情の引き出しも驚くほど少ないが顔はそれなりに可愛らしく描けている(ちなみに表紙はそうでもないというあたりがいかにもこの作者らしい)ので、上手く捨てキャラと頼光をリミックスすればそこそこ使える本になるかも知れない。面倒なことだが。ついこの間も似たような事を書いたが、もしかしてこういう救済策が流行っているのだろうか。
(2004/03/16)

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